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マレーシアで就職したい方へ。マレーシア就職の始め方の基礎知識

ツインタワー

マレーシアには、さまざまな宗教や文化を受け入れる寛容さがあり、人々は互いを尊重し合って生活しています。外国人であっても暮らしやすく、日本人の海外移住先として高い人気を誇っています。

マレーシアで育った外国人子女が大人になり、仕事で再び帰ってくるケースも少なくなく、筆者もそのうちの一人です。高校の頃に3年間ほどマレーシアで暮らし、高校時代の友人たち10人以上がマレーシアへ戻り現在でも働いています。

高校生の頃は気づかなかったマレーシアの魅力や注意点など、仕事をすることで新たな発見がいくつもありました。

今回は日本社会との違いを含め、マレーシアで働くメリットとデメリットを社会人目線で紹介します!

※1リンギット=約26円

マレーシア就職を始める前の基礎

モスク

サービス系を中心に求人案件が豊富

筆者は一度、マレーシアで仕事をしながら転職活動をした経験があります。日本からマレーシアへ渡って働き始めたものの、一年ほど経った頃に職場の労働環境の厳しさから体力的な限界を感じ、就労ビザ更新のタイミングでの転職を考えました。

次なる仕事先を探すべくマレーシア国内で転職活動をしてみると、ほとんどの日本人向け求人案件が、サービス系の職種であることに気づきました。会社は現地企業や日系現地法人です。

日本食レストランのマネージャーや日系ホテルでのカスタマーサービス職、コールセンターのオペレーターやエステティシャン、不動産会社での日本人顧客担当まで、多くの職種から選ぶことができました。

新卒や未経験者でも挑戦しやすい

そして、接客やサービス系の職種では、新卒者、未経験者、一般社員のスタッフ・レベルでの募集も多かったです。前職でサービスの仕事や営業職を経験していなくても、適性が合えば新しいことに挑戦できます。

サービス系の求人が豊富なことは海外就職・転職のハードルを下げてくれます。

日本人の接遇力が求められている

マレーシアでは現在、幅広い業種で日本人を対象としたビジネス、マレーシアの中流層をターゲットとしたサービス系ビジネスが活況で、その最前線に立つ人材が求められています。そこで注目されるのが、日本人。

日本語を使う業務が多く、また日本人が持つサービス業のノウハウが企業にとって魅力的なわけです。日本から進出したいろいろな形態のサービス系ビジネスが、マレーシアで成功していることが背景にあります。

技術系の営業職も求人多数

技術系であっても技術営業など、セールスとされる職種がメインです。一昔前までは、日本は主に独自の技術力を売りにしていたため、日系企業の工場や日系メーカーの事業所では、管理者クラスとされるマネージャー・レベルの技術系人材を求めていました。

豊富な知識と経験をもつ日本人技術者がいることで、日本の技術力が詰まった製品を現地で製造でき、現地のことがよくわかるローカル・スタッフがセールスを行う。そういった人材は高く評価されます。

マレーシアの人々にとっても、日本の製品を手にすることが一種のステータスなのです。

飲食系と小売業界も日本ブランド志向

以前は日本食を提供するレストランの多くは、マレーシア人が経営しスタッフもほとんどがマレーシア人といった、にわか日本ブランドが多く見受けられました。

ところが、マレーシアに住む日本人の数が増え、また、マレーシアの人々が日本に足を伸ばし彼らが日本で実際に目にした「本物」。本物の日本ブランドにこだわり始めています

牛丼チェーンの「吉野家」や「すき家」、うどんチェーンの「はなまるうどん」、コンビニチェーンの「ファミリーマート」など、数々の日本ブランドのお店がマレーシアの街中にはあります。これら業界でも日本人を積極的に採用しています。

美容や医療業界でも日本人が人気

そのほか、日本人スタッフが施術するエステやヘアサロン、日本人医師や看護師のいるクリニックなど、その分野は多岐に渡ります。

高い技術力や製品自体だけでなく、飲食や美容、医療や娯楽など、今日のマレーシアでは新たな「体験」に大きな関心が寄せられています。

日本人採用で教育効果にも期待

加えて、マレーシアの人たちは、日本人スタッフや日本人から直接研修を受けた現地スタッフから、日本と同じようなきめ細やかなサービスを受けることに付加価値を見出しています。

そのため、日本人スタッフも現場で直接顧客と関わり、積極的に現地スタッフの教育に携わることが求められています。技術系の職種でも営業担当として日本人が出向くと、それだけで信頼してもらえて契約が取れる、という話を聞いたことがあります。

日本での勤務経験はアドバンテージ

マレーシアで仕事をする際、日本で会社勤めをした経歴も大きなメリットになります。彼らが私たち日本人から得ようとしているのは、日本人の持つ仕事に対する真面目な姿勢や高いクオリティの仕事内容、日本の会社で身に付けた企業文化なのです。

人と接することに抵抗がなく、日本での社会人経験を活かしたい人にとって、マレーシアはうってつけの転職市場といえます。学生時代の接客アルバイトの経験も十分活かせるので、興味のある業種でぜひとも活躍してください!

マレーシア就職のメリット

祝日が多い

マレーシアで仕事をしていると、祝日がたくさんあることに驚かされます。国で制定されている国民の祝日は日本よりも多く、各州によって多少差があるものの、年間20日前後の祝日があります(日本の祝日は年間16日:2017年現在)。

国民の祝日以外にも、州や地域で決められた祝日もあるため、事業所の所在地によって祝日の日数が異なります。2017年度を例にとると、首都クアラルンプールの祝日は22日ですが、東マレーシアのサラワク州では1日多い、23日の祝日が設けられています。

旅行に行きやすい

飛行機

気軽に各地へ旅行できるのも、マレーシアに住んで実感したメリットの一つ。海外旅行はもちろん、マレーシア国内にも数々の観光地やリゾート地があります。週末や祝日を利用して、いろいろなところへ出かけられる楽しみがあります。

日々の仕事で疲れていても、東南アジアの中心という地理的立地を活かして旅行を楽しみ、定期的にリフレッシュすることができます。

日本に比べて航空券が安い

近隣諸国のタイやインドネシア、シンガポールやブルネイなどの海外へも、日本での国内旅行感覚で遊びに行けます。

格安航空会社のLCCを利用すれば、さらに低予算で旅行を楽しめるのもうれしい。時期やプロモーションによって差はありますが、筆者がよく利用するエアアジアであれば次の通りです。

例えば、クアラルンプールからシンガポールは130リンギット(約3,380円)程度、オーストラリアのパースまでは200リンギット(約5,200円)程度、フィリピンのセブ島までは350リンギット(約9,100円)程度です。

交通機関が充実:思い立ったらプチ旅行

近場であれば飛行時間が短く、特別に休みを取らなくても、ふと思い立ったら旅立てるのも大きなメリットです。

金曜の夜のフライトでバリ島に飛んで週末をビーチで過ごし、月曜の早朝フライトでクアラルンプールへ戻って空港からそのまま出勤…なんて荒業も可能なのです。

また、マレー半島の中心に位置する国立公園を取り囲むように、南北に高速道路が整備されているので、車での移動もなかなか便利です。南はシンガポール、北はタイと隣接しているため、陸路で国境を超えることができます。

交通機関が充実:高速バス

車がない場合や長距離運転に自信がなくても、高速バスの行き先や本数が充実しているので大丈夫です。

クアラルンプールからは、隣国シンガポールや国境の町ジョホール・バル、観光地のペナンや歴史の街マラッカなど、主要な地域へのアクセスがとてもいいのです。

クアラルンプールからシンガポールまでは、50リンギット(約1,300円)程度。バスのグレードによってはフルフラットシートでしっかり睡眠をとることができWi-Fiや飛行機のような個人スクリーンも完備、移動中も快適です。

移動時間は5時間ほど。飛行機に乗っている1時間に加え、空港までの移動時間や入出国手続きの時間を考えると、さほど変わりはありません。

銀行の金利が高い

お金

日本ではどんなに一生懸命働いて節約して貯金をしても、銀行に預けているだけでは金利が安いため、お金を簡単に増やすことはできません。

大手都市銀行に預けていると、普通預金では0.001%、定期預金(1年)でも0.01%程度の金利しかつきません。最近、台頭してきたネット銀行でも、普通預金で最大0.02%、定期預金(1年)で最大0.25%程度の利率です。

マレーシアの銀行は普通預金でも金利1~2パーセント

マレーシアの銀行は全体的に金利が高く、どの銀行でも預けているだけで資産を増やすことが可能です。

普通預金でも一般的な利率は1~2パーセントで、定期預金では3パーセント程度の年利となります。長期定期預金(5年)にすると、さらにお得な3.5パーセント前後です。

定期預金の期間も1カ月から選ぶことができ、年利を月割りにして還付してくれます。ボーナス月にがまんすれば、翌月にランチ代程度のお小遣いがもらえる感覚です。

1カ月定期にしても翌月650円ほど増える

例えば、10,000リンギット(約26万円)を1カ月定期にするだけで、翌月には25リンギット(約650円)増えています。1カ月を30日として考えても、1日で約21円ほど増えている計算です。

定期預金は自動更新されるので、1年間手をつけずにおいておけば、300リンギット(約7,800円)も増えます

このように、マレーシアでは銀行に預金をすればするほど、お金を増やせるシステムになっています。

銀行金利をチェックしよう

仮に手元に10万円あって、普通預金に放置していたとします。日本の大手銀行では(金利0.001%として)年間1円しか増えないのに対して、マレーシアの銀行では(金利1%として)年間1,000円!単純計算でも、1,000倍の差はかなり大きいですよね。

銀行によって定期預金のプランも違うため、マレーシアの人々は銀行金利をランキング形式でまとめているサイトなどを活用しています。手軽な資産運用のため、常に最新の情報をチェックです。

マレーシア就職のデメリット

キャリアパスの見通しを立てにくい

マレーシアの現地法人で仕事をして筆者が一番のストレスに感じていることは、常に数年先の身の振り方を考えておかなければならないことです。マレーシアには終身雇用制度はありません。

就労ビザ更新、保証なし

「○○年後くらいには管理職に昇進して、給料は○○万円くらいになるだろう」という、だいたいのビジョンを描きにくいです。将来に向けたキャリアパスの見通しを立てにくいことが、マレーシアの現地法人で就業する最大のデメリットだと思います。

正社員として採用されても就労ビザ(EP)の更新が必ずしも保証されていないことに一部関係しています。

数年ごとにEPを更新して10年以上も同じ会社で働く人もいます。しかし、自分がどんなにその仕事が好きで、どれだけ会社に貢献していたとしても、ビザや契約の更新が約束されている訳ではありません

ビザ取得要件は頻繁に変更される

マレーシアでは、ビザに関する情報開示を積極的に行っておらず、ビザの取得要件も頻繁に変更されます。採用時の取得要件と、2年後に更新するときの要件が大幅に違うため、政府からのEP更新許可が下りずに帰国を強いられる場合もあります。

また、許可や拒否の決定が担当者の主観によって左右され、公平性に欠ける傾向にあります。コネがある人や便宜を図ったことのある人(一部には賄賂を渡す人も)が優先され、正式なルートで申請した者は後回しになることが日常的にあります。

守られるのは自国民

外資系の現地法人では、会社の経営状況や業績が悪化すると、コストのかかる外国人は真っ先に解雇されてしまう可能性もあります。

正社員として定職に就いても、今後どれくらい働き続けられるかもわからない不透明な状態は、精神的にも経済的にも大きな負担です。

給与面の問題

また、20代・30代の若い世代が海外転職をしてマレーシアで最初に就くポジションは、一般社員クラスのスタッフ・レベルや業界経験者ではシニア・レベルになるのが一般的で、スタート時の給与条件も5,000リンギット(約13万円)からが平均的です。

同じ会社に長く勤めて管理者まで昇進しても、実際のところは、中途採用のマネージャー・レベルの給与の方が高くなります。

それは、雇う側としては高い給与を出してでも、他社で経験を積んできた人材に来てもらう方が、自社にはない新しいやり方や他の現場で培ったノウハウを自社のために活かしてもらえると考えるからです。

就労ビサ更新時期に転職繰り返す

そのため、EPを更新する2年から5年のタイミングで、キャリアアップを目指し転職を繰り返します。スタッフからシニアへ、シニアからマネージャー・レベルへと転職を重ねて昇格。給与や待遇を含めた契約内容も、前職より良い条件になるチャンスなのです。

この転職活動が、必ずしもうまくいくとは限らないため、海外で次のステップを踏み出すときの大きな不安材料となり得るのです。

EP更新のタイミングで希望の職種に就けなかった場合、一旦、日本へ帰国したり、観光ビザで滞在期間を伸ばしたりしながら、転職活動を続けます。半年ほど貯金を切り崩してマレーシアでの生活をつなぎ、何とか次の就職先を見つけた知人もいました。

会社を渡り歩く度胸を

このような不安定な状況のなか、いかに人脈を広げていき、そのネットワークを使いながら、どれだけ自分の力で将来への道を切り開けるかが、転職後の生活を左右するポイントになります。

キャリアパスをどう構築していくかは、マレーシアに限らず、終身雇用ではない働き方を選択すると直面する問題です。

マレーシアの現地法人に雇用される場合は、数年ごとのビザ更新時にやってくる不安感に慣れ、必要に応じて会社を渡り歩いていく度胸が必要となるでしょう。

マレーシア就職の注意点

休日や祝日が地域や年度で異なる

マレーシア

マレーシアでは各州によって祝日が異なるため、ビジネスをする上では気をつかうポイントにもなります。

州や地域によって休日の曜日も違い、日本と同様に土曜・日曜が休日の地域と、金曜・土曜休みの4州(ジョホール州・ケランタン州・ケダ州・トレンガヌ州)があります。

宗派によっては稼働時間があてにならない

土日が休みの地域でも、イスラム教徒は金曜日の午後に礼拝時間を長く取るため、金曜日はほとんど仕事が進まない状況です。実際の稼働曜日は、月曜から木曜までと心得ておいた方が無難です。

また、異なる宗教の人々が暮らすマレーシアならではの特徴もあります。イスラム教はイスラム暦、華僑は中国暦、ヒンドゥー教は太陰太陽暦に基づくため、各宗教に関係する祝日は、その年によって日にちが変動します。

国内の祝日を常にチェックする必要あり

同じマレーシア国内でも、こちらは稼働日なのに取引先が休日・祝日のために連絡が取れない、前年とは祝日と休日の並びが違うため、毎年恒例の全社行事が同じ日に開催できないなどよくあることなのです。

日本で働いていた頃は、全国どこでも祝日や休日が同じで、毎年だいたい同じ日が祝日。マレーシアで働きはじめた頃は慣れずに戸惑いました。

マレーシアに住む人たちは、祝日や公立学校の休みを調べられる専用サイトを使い、毎年変わる祝日に臨機応変に対応しています。

安い不動産物件を購入できない

コンドミニアム

※日本人が多く住む高級住宅地 Mont’ Kiara(モントキアラ)に建つ、コンドミニアム群

マレーシアの不動産は割安で、コンドミニアムの1平方メートルあたりの単価はカンボジアやタイと比べても安い相場です。新築・中古を問わず、多くの物件が売買されており、投資目的で不動産を購入する人も少なくありません。

しかし、外国人が不動産を購入する際は、各州や地域によって購入最低価格が設定されています。そのため、お気に入りの中古物件や割安物件を見つけても、安すぎて購入できないことがあります。

外国人には不動産購入最低価格が設定

クアラルンプール市内やその他の多くの州では、原則として100万リンギット(約2,600万円)未満の物件は購入できません。

ベッドタウンで人気のクアラルンプール郊外のセランゴール州では、200万リンギット(約5,200万円)の最低価格が購入条件です。

例外としてマラッカ州のコンドミニアムや、サラワク州・ペルリス州の不動産は50万リンギット(約1,300万円)以上であれば購入できますが、地方では地価そのものが安いので、50万リンギットでも高級物件です。

ちなみに、日本人が多く住むクアラルンプールの一等地では、約100平方メートルの3LDKのコンドミニアム一部屋が、だいたい100万リンギットの相場です。

購入するなら銀行の利息やローンを活用

郊外であればもっと割安です。それと、最近ではマレーシア全体で不動産価格が下がってきている傾向で、筆者もクアラルンプールで働き始めた頃は、日本と比べて不動産価格が安いことに驚きました。

「若いうちに素敵なマイホーム購入も夢じゃない?」と舞い上がったのですが、購入最低価格が設定されている事実を知り、非常にがっかりした記憶があります。

それでもマレーシアでは、一旦、不動産を購入してしまえば外国人の所有権が保証されており、居住者であれば銀行ローンも利用が可能です。

銀行の定期預金の利息などでがんばって頭金を貯め、市場価値の高い不動産を手に入れて運用するのが賢い選択でしょう。

まとめ

世界を見渡すと少子化が社会問題となっている国々が多い中、マレーシアは若年層人口の多く国民全体にエネルギーがあります。購買力も成長力もある、将来有望な発展途上国です。

そんなマレーシアで生活し、キャリアを積んでいくことは楽しいことばかりではありません。しかし、自分自身の将来に責任を持って、自ら新しい道を開拓していく醍醐味を味わうには最適な環境です。

新しい可能性にかけ、ぜひ充実した海外生活をマレーシアで実現させてください!

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マレーシア生活・就職HACK編集部
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