2000年に世界遺産登録されたマレーシア・サバ州のキナバル自然公園。その広さは約754平方キロメートル、国土が719.9平方キロメートルのシンガポールよりも広い公園です。
この広い領域はキナバル山を含む3つの山域を保護するため作られたもので、植物が4,500種類、チョウが250種類、ほ乳動物が123種類いるといわれています。
登山途中ではウツボカズラなど珍しい植物も見られます。
このキナバル国立公園にそびえ立つキナバル山は、標高4,095.2mで、毎日多くの観光客が訪れます。
初登山で東南アジア最高峰ともいわれるキナバル山に登って来ました。
※1リンギット=24.6円
マレーシアの世界遺産キナバル山の概要
キナバルの名前の由来は2通りあります。
キナバル伝説
中国の王子がボルネオ島に漂流し、現地の女性と結婚をしました。ところが、王子は国に帰らなくてはなりません。
必ず戻ると約束をして中国に戻りましたが、ついに王子は戻ってきませんでした。帰りを待ちわびた女性は、海が見渡せるキナバル山に毎日毎日登った、という伝説です。
ここでの「キナ」は中国、「バル」は未亡人を意味します。
原住民、ドゥスンの言葉
「先祖の宿る山」を意味する「アキ・ナ・バル」がなまったという説。「アキナ」はおばあちゃんの意味があり、「ナバル」は山の意味です。
亡くなった魂はキナバル山に帰ると信じられているようで、サバに古くから住むドゥスン族の人は「キナバル山に足を向けて寝ない」と本で読んだことがあります。原住民のカザダン・ドゥスンには神聖な地で、精霊が宿る山と信じられています。
キナバル山は神聖な山
余談ですが、2015年にキナバル山付近でマグニチュード6.0の地震が発生し、16人が亡くなるという災害がありました。
この地震の5日前に欧州人数名が頂上で裸になった事件があり、逮捕された数名は有罪判決が下っています。彼らがソーシャルメディアにUPした写真は、多くのマレーシア人の怒りをかいました。
また、この地震の原因を当時のサバ州副首相が「神聖な山を冒涜する外国人の素行が原因で、彼らが山の神を怒らせた」と発言し、話題となりました。この発言でいかにサバに住む人たちにはキナバル山を神聖な山だと認識しているか分かります。
マレーシアの世界遺産キナバル山に登山するには
要予約
写真は、コタキナバル市街地にあり旅行会社が多く入居しているウィスマサバというビルです。
一日135名の登山者制限
キナバル山の登山は一般的に、1泊2日か2泊3日のどちらかのプランで登りますが、一日135名の登山者制限があります。また、2015年の地震以降、山を登るにはガイドを付けることが義務付けられているので、事前の予約は必須です。
とても運が良ければ、当日の朝早く公園事務局に出向いて、ベッドとガイドの空きがあればその場で登れるようですが、なかなかそうもいきません。
旅行代理店を通じて予約
キナバル登山を取り扱っている旅行代理店は限られています。山小屋のベッド数を一番多く持っている旅行代理店が、Amazing Borneoという会社です。
HISコタキナバル支店、ボルネオトレイルも取り扱っており、この2店は日本語対応が可能なので、安心して予約ができます。
山小屋を管理している、ステラハーバー社でも予約が可能です。ただし、基本の予約は2泊3日のみとなり、1カ月前の時点でベッドが空いていれば、1泊2日での予約が可能となります。
マレーシアの世界遺産キナバル山への登山準備
用意したものは以下になります。
- パスポート
- トレッキングシューズ
- トレッキングパンツ
- 登山用靴下
- リュック
- レインコート
- フリース
- ダウン、フーディニ
- 手袋
- ヘッドライト
- ストック
- 水
- 薬(高山病予防の薬や常備薬など必要があれば)
- あめなどのお菓子
登山専門店で急な準備も
急に登りたくなっても、現地ですべてそろえることができます。ただし、一カ所でそろえるのは難しいので、時間がかかります。また、トレッキングシューズはサイズが必ずあるとは限らないので、できるだけ持参した方がよいでしょう。
雨は必ず降ると思っていた方がよいです。レインコートやポンチョ、リュックのレインカバーも忘れずに用意が必要です。
気温差に注意
常夏のマレーシアですが、キナバル山頂の気温はおおよそ0度から5度。ただ、時期によって気温差があります。
わたしは、比較的暖かい乾季の7月末に登りました。頂上アタックの際に着用していたものは、長袖Tシャツ、半袖Tシャツ、パタゴニアのフリース、アーステリックのダウンジャケットでした。
登っている間は汗をかきますが、止まると寒いです。これだけ着てちょうどよい体感温度になりました。
雨季に登る場合はもっと気温が下がるので、ヒートテックやネックウォーマーが必要でしょう。外気を入れないアウターは必要です。
ライトとストック
ヘッドライトは必須持ち物として旅行代理店から連絡があります。登頂アタックの出発が午前2時なので、ライトがないと何も見えません。コタキナバル市街地で入手可能です。
ストックは必須ではありませんが、あって良かったと思える物の一つでした。キナバル公園入口でレンタルが可能です。2つで10リンギット(約30円)です。
また、下山後の着替えなど、登山に必要ないものも公園入口で預かってもらえます。荷物一つにつき20リンギット(約60円)程度です。
高山病対策
高山病の薬は日本では医師の診断が必要で入手しにくいようですが、マレーシア人の友人が教えてくれたのがこちらです。これを2日間、登山前に服用しました。
途中で多少手のしびれはありましたが、高山病にはならずに無事登頂できました。主な用途は車酔い、吐き気、めまいの予防薬ですが、薬に詳しくないので、下記サイト(英語・マレー語)を確認の上ご判断ください。
マレーシアの世界遺産キナバル山での所持金
今回持参したのは、念のため500リンギット(約1,500円)でした。すべての食事と登山に伴う料金はツアー料金に含まれているため、特別必要がありません。
追加で支払うものは、ガイドのチップ、荷物を預けたりポーターを雇う場合、山小屋で個人的に買い物をする場合です。
そのうち使用したのは、往復のポーター代130リンギット(約350円)、山小屋で注文したバイキングとは別でジンジャーティー11.5リンギット(約32円)、1.5リットルの水21リンギット(約57円)です。
水は通常2リンギット(約6円)程度で購入できるので、実に10倍の値段です。
物資を運んでくれる方々に感謝
しかし、すべての物資を人が運んでいることを考えると高いとは思えませんでした。売店で販売しているドリンク類、調理に使うガスタンク、食材やベッドマットレスを運んでいる人と何度もすれ違いました。
都市ガスがひかれていないコタキナバルでは一般家庭でもガスタンクを利用しますが、35㎏満タンのタンクを私は持ち上げることができません。空のタンクでもそう簡単には持ち上がりません。
これを頭にくくりつけ、標高高い険しい山道を登り降りする姿には頭が下がりました。
所持金を多めに持参した理由
万が一高山病で下山する際に歩けない場合、運んでもらう可能性があります。以前、背負って降りてきてもらった人がいる話を聞いていました。道中で、実際に人を乗せた担架を4人の救護員が担ぎ、登山路を降りていくのを見ました。
タンカは1kmごとの料金になるそうです。後になって値段を聞けばよかったと思ったのですが、標高が高くなると脳の回転が鈍るようで聞き忘れてました。
マレーシアの世界遺産キナバル山の登山当日
1日目
朝6時30分に集合場所からミニバンで、キナバル国立公園に向けて出発します。所要時間は約2時間ほどです。
公園に着き、ゲートで受付とIDの確認をしたら、担当ガイドからお昼のお弁当を受け取ります。登山口までミニバンで行き、簡単な説明を受けたら、登山開始です。
だいたい1kmごとに休憩所があり、トイレも完備されています。長く休憩をとると疲れるそうで、5分程度休んでは出発していました。3つめの休憩所でお弁当です。お弁当の時も約15分の休憩です。
ひたすら登り続けます。個人差がありますが、午後3時に山小屋に到着、チェックインです。遅い人でも4時半ごろには到着していたと思います。4時半から7時半が夕食のバイキングになり、食事を済ませたら就寝です。
共同シャワーがありますが、外気に対してお湯の温度が低いため、寒くて誰も入っていませんでした。タオルで体を拭く程度です。
就寝時間は決められていませんが、6時間以上山を登り、酸素が薄いので起きているのが大変でした。深夜に再び登山を開始するため、8時前に就寝です。
2日目
深夜1時30分から2時30分が夜食のバイキングです。軽く食事をしてから頂上に向かって出発します。まだ真っ暗な中、頂上目指してヘッドライトの列ができるのです。
日の出までは約4時間なので、ほぼ休憩は取りません。4095.2M地点に到着したら、ほどなくして下山し始めます。山小屋のチェックアウトが午前10時30分なので、それまでに戻って荷物をまとめないとなりません。
午前7時半から9時半が朝食バイキング、荷物をまとめたら再び山を降ります。
「登るときはもっと楽な道だったはずなのに」と思うほど、下りは歩きにくく時間がかかりました。
無事に下山したら、お昼ご飯が待っています。公園入り口のレストランでランチバイキングが食べられますが、4時半までなので、この時間を過ぎた場合は残念ながら食べられません。
食事の後、ポーター代の支払いをし、ガイドから登頂証明書をもらいます。うれしいお土産です。
その後、ミニバンでコタキナバルまで戻り解散です。帰りは下山時間に大きく左右されますが、早ければ午後4時頃にはコタキナバルに戻れるでしょう。下山に時間がかかってしまったため、コタキナバル到着は午後7時でした。
まとめ〜自力で達した高みから眺める景色は最高です
1泊2日と2泊3日プランの違いは、キナバル国立公園のある、クンダサンという町に前泊するかしないかの違いで、最終日に頂上から一気に下山する点は変わりありません。
登山のベストシーズンは、比較的天候が安定している2月から5月がおすすめと言われます。しかし、コタキナバルから見える山頂は、たいていお昼前には雲に隠れます。
雨は必ず降ると思っていた方が良いでしょう。強風、豪雨、朝から雨がしとしと降る日や、滝のような豪雨の日もあります。
登山が危険とみなされると、山は閉鎖され登ることができません。中腹の山小屋までたどり着いても、登頂アタックができないことがあります。天候が理由の閉鎖の場合、返金はありません。下山後は白黒の登頂証明がもらえるそうです。
コタはマレー語で「町」つまり、キナバルの町という意味です。山の上から見下ろすコタキナバルの町は圧巻でした。
標高が高くなるにつれ、疲れが増してきます。頂上は歩いても歩いても終わりが見えず、何度もくじけそうになりましたが、その頂上に立った時、言葉では言い表せない景色を見られることでしょう。
基本情報
- 名称:キナバル国立公園
- 住所:89300 Ranau, Sabah
- アクセス:コタキナバルから車で約2時間
- 営業時間:午前7時から午後5時
- 電話番号:(60)88-523 500
- 公式サイト:http://whc.unesco.org/en/list/1012
基本情報
- 名称:amazing bruneo(アメイジングボルネオ)
- 住所:L1.39 1st Floor, Star City North Complex,Jalan Asia City 88000 Kota Kinabalu, Sabah
- アクセス:コタキナバル市街地 アジアシティコンプレックス内
- 営業時間:平日・午前9時から午後6時/土曜・午前8時30分から午後1時
- 電話番号:60)88-448 409
- 公式サイト:https://www.amazingborneo.com/
基本情報
- 名称:borneo trail(ボルネオトレイル)
- 住所:Lot 128, 1st Floor, Wisma Sabah, Jalan Tun Fuad Stephens 88400 KotaKinabalu, Sabah, Malaysia
- アクセス:コタキナバル市街地ウィスマサバ内
- 営業時間:午前9時から午後5時30分
- 電話番号:(60)88-235900, (60)88-245900
- 公式サイト:www.borneotrails.com
基本情報
- 名称:HISコタキナバル
- 住所:Address:C-02-03, Block C, Lot No.3 2nd Floor, Warisan Square 88000 Kota Kinabalu, Sabah
- アクセス:コタキナバル市街地 ワリサンスクエア内
- 営業時間:午前9時から午後6時15分
- 電話番号:06)88-216171
- 公式サイト:http://histravel.com.my/