日本人の長期滞在者が多いことで有名なマレーシア。となると、結婚・出産・子育てをマレーシアで経験する方も自然と多くなります。
今回はその中でも出産に関しての記事です。
以前は、出産にともない日本へ里帰りする方も多かったようですが、最近はここマレーシアで出産する方が非常に増えています。私自身もクアラルンプールで出産しました。私の体験を元にクアラルンプールで受けられる両親学級についてご紹介します。
※1リンギット=約25円
クアラルンプールで受けられる両親学級概要
両親学級とは
両親学級というのは、出産を控えた夫婦に向けて出産の準備や授乳について、沐浴方法などを教えてくれる講座です。日本では主に母親に向けた母親学級もありますね。
英語では「Parent Craft」
両親学級は英語で「Parent Craft」と言います。クアラルンプールでは、両親がそろって受講できるように平日の夜、もしくは週末に開講していることが多い印象です。
クアラルンプールで妊婦健診を受けている、もしくは出産予定の夫婦が受けることができる両親学級は主に3つです。
各病院
産婦人科のある総合病院では、たいてい両親学級を用意していると思います。ご自身が妊婦健診を受けていて、出産予定の病院の両親学級であれば、入院部屋や分娩室も見学できるはずなので良い参考になるはずです。
妊婦健診でかかっていない病院の両親学級が受けられるかどうかは定かではありません。おそらくそれぞれの病院の対応によるでしょう。希望があれば受け入れてくれるかもしれませんので、各自問い合わせてみてください。
日本人会
クアラルンプール日本人会でも「出産準備教室」という名前で、定期的に両親学級が開講されています。全5講座で構成されており、日本人会会員でなくても参加可能です。
会員であれば無料で参加できますが、非会員は料金が掛かります。詳しくはホームページをご参照ください。
- クアラルンプール日本人会HP:http://www.jckl.org.my/index.php
こちらの良いところは日本語で受講できるということ。病院での両親学級は、対象者が日本人だけではないので英語で進められます。英語での日常会話が困難な方は日本人会の両親学級がお勧めです。
ただし、残念ながら毎月開講されていないのが現状です。数カ月に一度というペースですので、タイミングが合えば受講されてみてはいかがでしょうか。
安定期に入ってからの受講が勧められており、私自身は妊娠経過と受講のタイミングが合わず、参加できませんでした。
ベビー用品企業
ベビー用品を取り扱う企業でも両親学級が行われています。
例えば「motherhood」というマレーシア企業では、ひと月に一度、丸1日(9:00〜16:00)の両親学級を開催しています。費用はカップルで160リンギット(約4,160円)とお手頃です。
- motherhood公式HP:https://www.motherhood.com.my/campaign-nurengroup/
両親学級では、同じ妊婦さんに出会える貴重な場所なので、友達を作りたい方にも最適です。妊婦同士、悩みや喜びをシェアできるといいですね。
グレンイーグルスクアラルンプール病院で両親学級
私が実際に受講したのは、グレンイーグルスクアラルンプール(Gleneagles Kuala Lumpur)という私立総合病院の両親学級です。妊婦健診・出産もこちらでお願いしました。
この病院はクアラルンプール中心部から車で10分ほどのアンパンというエリアにあります。クアラルンプールでは5本の指に入る大病院で、日本人通訳も勤務しているので、妊婦健診の際などは語学に自信がなくとも安心して通うことができました。
ただし、出産当日は通訳は付かないものとして覚悟したほうがいいでしょう。通常、出産はいつくるか分からないものですし、長い陣痛・分娩の間、通訳があなたに付きっきりというわけにはいきません。
最低限ご自身で対応できるように、妊娠・出産に関する英単語は前もって調べておきましょう。
両親学級の概要
さて、こちらの両親学級ですが、全3講座で構成されています。毎週土曜の午後に開講しており、父親も参加しやすいプランニングです。毎月受け付けているので、安定期に入ってから自分の都合の良いタイミングで受講できるのもうれしいところ。
費用は220リンギット(約5,720円)。この費用は両親分(2人分)です。ちなみに母親1人で参加しても同じ費用になります。
またこちらの両親学級では、育児に関するサンプル品がもらえるのも特典です。今回は、ベビー用クリームや母乳パッド、オムツ、オムツ交換シート、食事用スタイなどがもらえました。
量は多くないですが、特定のものを購入前に使用感が試せるのは助かりますよね。
クアラルンプールでの両親学級1回目
第1回目の内容は、「出産のプロセス」と「痛みの管理」、「赤ちゃんのお世話と沐浴」についてでした。
「出産のプロセス」
ここではドクターからどのように出産が進むのか、どのような状態になったら病院へ向かうべきかなどが話されました。産婦人科のドクターが直接説明し、質問や疑問にも答えてくれます。
「痛みの管理」
この病院で受けられる痛みに対する処置について説明がありました。マレーシアでは無痛分娩が盛んで、この病院も例外ではなく、24時間いつでも無痛分娩を頼むことができます。
日本では、前もっての予約などが必要ですが、こちらでは分娩中に無痛分娩に変更することも可能です(状況による)。
また、日本ではなじみのない「笑気ガス」もあります。それは麻酔の一種で痛みを和らげるといわれており、お酒に酔ったような感覚になると聞いたことがあります。
「赤ちゃんのお世話と沐浴」
主に新生児の扱い方、沐浴の方法、へその緒の掃除方法などが助産師から説明されました。新生児は免疫力も低く繊細なので、両親学級などでしっかりと扱い方を学ぶ必要があると感じました。
また保険会社AIAから、赤ちゃん用の保険に関する説明もありました。マレーシアで私立病院にかかると、医療費は高額です。子どもの保険加入も検討する必要がありそうです。
クアラルンプールでの両親学級2回目
第2回目の内容は、「幼児によくある症例」と「授乳中に必要な栄養素と授乳」、「臍帯血(さいたいけつ)バンクに関する説明」があり、帰り際には出産施設の見学がありました。
「幼児によくある症例」
助産師よりコリック(日本では黄昏泣きといわれている)や黄疸、湿疹、オムツかぶれ、肌荒れなど幼児特有の症状が写真付きで説明され、どのような対応が必要かも教えてもらえます。
「妊娠中に必要な栄養素と授乳」
母乳や授乳についてのお話と、妊婦や授乳中のお母さんが必要な栄養素の説明がありました。
マレーシアの私立病院に通う妊婦さんの話を聞くと、どこも母乳推進のようでした。Gleneagles Kuala Lumpurも母乳推進だと思います。
が、共働きの多いマレーシア、産休は一般的に2カ月と聞きますので、実際には粉ミルクもしくは、母乳・ミルク混合で子育てしている家庭が多いと推測されます。
妊娠中の理想的な体重増加も提示されました。面白いのが日本とマレーシアでは許容される体重が違うという点です。
マレーシアで望ましいとされる体重
妊娠中は胎児の重さの他、羊水や胎盤、溜め込んだ水分や脂肪、血液も増えるので、自動的に体重も増加します。
日本では体重管理がとても厳しいと聞きます。下記の表を見ても分かるように、日本で一般的に推奨されている体重増加量とマレーシアのそれとは大きく違います。
実際、私自身トータルで12キロ増加しましたが、妊婦健診で体重について医師からコメントされたことは一度もありませんでした。
日本 | マレーシア | |
BMI18.5未満 | 9〜12キロ | 13〜18キロ |
BMI18.5以上25.0未満 | 7〜12キロ | 12〜16キロ |
BMI25.0以上 | 5キロを目安に個別に対応 | 11キロ |
「臍帯血バンクに関する説明」
臍帯血バンク会社の担当者から説明がありました。臍帯血はお母さんと胎児をつなぐへその緒や、胎盤の中に含まれている血液です。そこからしか採取できない貴重な血液のため、出産時にそれを保存するかどうかを決めることができます。
臍帯血は主に白血病の治療や、再生医療に役立ちます。赤ちゃんが将来、白血病を発症した際には、臍帯血を保存していると、その本人の臍帯血を利用して治療を行うので、炎症などが起きにくいとされているようです。
クアラルンプールでの両親学級3回目
第3回目は、理学療法士による「産前・産後のエクササイズと呼吸法」のレクチャーです。ヨガマットを敷いて、実際にエクササイズをしていきます。
妊娠後期になってお腹が大きくなると立ち上がるのも一苦労で、間違った方法で無理に立ち上がるとお腹に負担をかけたり、体を痛めかねません。
正しい立ち上がり方や、腰痛防止のエクササイズ、基本的なストレッチや妊婦でもできる腹筋、尿漏れ防止のエクササイズなどがありました。
また、こちらで教えてくれる呼吸法はラマーズ法で、陣痛が来た際、そのステージごとに最適な呼吸法を学べます。理学療法士の指導の元、全員で実際にラマーズ法の呼吸法を行うので、出産が近いことを実感しますよ。
全ての両親学級は約2.5時間で、途中にafternoon teaと称して休憩がありました。フルーツや焼き菓子、サンドイッチなどの軽食と飲み物が振る舞われます。
まとめ
海外での出産は母国でのそれより不安も勝ります。そんな不安を少しでも解消するために、出産・育児に関する正しい知識を身に付ける必要があります。初産のお母さん・お父さんは、ぜひ両親学級に参加することをお勧めします。
現在はネットを検索すればいくらでも情報は出てきますが、実際にドクターや助産師、同じ出産を控えるカップルと話ができる機会は貴重です。不安を解消して、楽しい気持ちでワクワクしながら出産に望みたいですよね。