事前に海外就職や外資系企業の価値観についてはリサーチしていたため、おおよそ予想がつきました。が、実際にマレーシアで働いてみると初めてのことばかりで戸惑ったり、イライラすることも多かったです。
とはいえ1年半働いた経験では、総じて日本で働いていたときより良いことの方が多かったです。なにより生活の質が向上しました。
これからマレーシアで働こうと思っている人の役に立てたらと思い、実体験に基づいた内容をご紹介します。
マレーシアのIT企業のテクニカルサポートで働く
マレーシアでの私の最初の仕事場は日系企業のコールセンターでした。製品を購入したクライアントからのIT機器やネットワーク障害などに対する、テクニカルサポートを電話で行います。
本来対応する必要のない問い合わせも多いのですが、クライアント側が困ってる状況では業務範囲外でもむげに断ることができず、可能な限り対応していました。
サポート内容を全体的な割合でいうと、7割はテクニカルな業務範囲内のこと、残りが上記のような業務外のことでした。
マレーシアのコールセンターは3タイプ
マレーシアではコールセンターが多く、日本人を大量採用しています。コールセンターというとスキルが身に付く業務が少なく、キャリアアップを期待しにくいと思われていませんか?しかし、マレーシア就職初心者にとって悪くない選択だと思います。
マレーシアではおよそ以下の3種類のコールセンターがあります。
カスタマーサポート
すべてのお問い合わせを受ける態勢にあるのが、この種のコールセンターです。電話をかけると自動音声が流れて、内容別にダイヤルをプッシュしてオペレーターにつながるシステム。コールセンターの一般的なイメージは、このタイプだと思います。
一般客が相手だとモンスターカスタマーがいたり、業務と関係ないことを延々話されたりする一種のクレーム対応も含まれます。3つの中で一番精神的に負担がかかります。
SNSのコンテンツ違反の監視
大手のSNSサイトの書き込みや映像、画像でポリシー違反がないかチェックする仕事です。風俗、公共性、プライバシー、法律違反、犯罪などに触れていないか監視します。
問題があると判断すれば、ユーザーや企業に連絡を取り変更を促します。電話対応だけでなく、メールやチャットでのやり取りも多いです。
ITテクニカルサポート
ネットワークやソフトウエアのサポートで、私がしていたのがこの仕事です。ITに関する知識が必要ですが、エンジニアレベルまでは求められません。入社後自己学習や周りの人にサポートを受けながら業務にあたることができます。
ここで知識と経験をつけて、ネットワークエンジニアへ挑戦する人もいます。私としては相性の良かった仕事でした。
マレーシア人スタッフの働き方、考え方
業務の担当範囲が決まっている
自分の受け持ちの範囲が契約で決まっており、それ以外の仕事は断っても問題ありません。トイレやデスク周りの掃除などは清掃専門会社に依頼しているので、業務に集中できる環境が整っています。
配置転換や転勤はありません。それがある場合は、契約書に記載があり事前に説明されます。自分の生活を最優先するのが当然で、仕事後のプライベートや休暇の予定が立てやすいです。
突然転勤を命じられ、家を買ったばかりなのに単身赴任。そんな話を日本ではよく耳にしますが、マレーシアでは聞いたことがありません。
ONとOFFがはっきりしている
仕事はさっさと終えて、自分の時間を楽しむという考え方が徹底しています。
飲み会はありません。仕事後、同僚同士で遊びに行ったりご飯を食べに行くなどもあまり聞きませんでした。
仕事終了の10分前から帰り支度を始めて、終業時刻ぴったりにオフィスを出ます。10分でも残って仕事をしていると「なにやってるの?帰宅の時間ですよ!」とよく言われました。
仕事の責任感は日本人のほうがある
同僚はみんな日本へ留学経験があり、流ちょうな日本語を話せました。日本人の仕事観に対して理解があり、英語が共通語の職場よりは仕事はしやすかったです。
しかし、緊急性の高い内容を依頼しても、業務範囲がはっきりしているので「私の仕事じゃない」と断られることがありました。
また、込み入った内容だと面倒でやりたくないという理由でなのか、私がお願いされることはありました。
マレーシアで働き始めて驚いた違い
細かいことは要求されない
業務を早めに片付けて空いた時間があると、スマホでSNSをしたりyoutubeを見たりしている日常には驚きました。
日本で勤務していた会社では休憩時間以外は仕事に関係ないことは厳禁、同僚とのおしゃべりでさえはばかれる雰囲気でした。ですがマレーシアの私の職場では決められた仕事をしていれば自由でした。
もちろんマレーシアのすべての会社にあてはまるわけではないですが、他の会社勤務の日本人に聞いても総じて自由のようです。周りは食べながら飲みながら仕事していました。
疾病休暇がある
日本では病気になったら会社に連絡して、有給休暇を取るのが普通だと思っている人が大半ではないでしょうか。
マレーシアの仕事環境は欧米に近いため、有給休暇と別に疾病休暇があります。病気をした場合は疾病休暇を申請し、病院に行って診断書をもらいます。後日診断書を提出し承認されると、給料が支払われ病欠と記録されます。この制度にも驚きました。
病気やけが一切なしで仕事ができればいいですが、そうはいかないこともありますよね。治療や静養のために有給休暇を使うのは異常だと思うようになりました。
マレーシアと日本の違いからストレスに感じること
仕事は自分で自主的に覚えるもの
新しい環境になり「研修でできるかぎり業務を覚えて、早く独り立ちできるように目指そう」と、はりきって初出社!1カ月の研修期間で基本的な業務内容を教えていただきました。
ところが半分以上の期間は他の人の業務を見て、分からないことは質問して学ぶという方法。自主的に学ばない限りほとんど放置されていたような状態で、たいへん戸惑いました。
質問するにも業務全体の流れがつかめておらず、どこから何を質問すればいいのか分からなくて困りました。日本であれば入社面接がていねいにあり、進む方向性を研修で示してくれます。こういったことは、ほとんど私の職場ではありませんでした。
仕事以外の生活面手続きに時間がかかる
入退社時は税金、保険、社会保障の手続きがあります。
日本では決められたフォームに記入するだけで残りの手続きは会社がしてくれます。マレーシアでは手続きに必要な書類は会社が発行してくれますが、その後の手続きは自分で役所に行き届け出をしなければなりませんでした。
手続き用の詳しいマニュアルはなく、社内の日本人に聞いたりインターネットで調べたりしてやりました。ところが手続きに行くと必要な書類が違っていたり人事部の直筆のサインが必要だったりして、何度も足を運びました。
正直もう一回やれと言われたら、やりたくないですね。
マレーシアと日本の違いからストレスに感じることの対策
指導者を探しマレーシアのペースになじむ
簡略な研修があまり役に立たないまま実践に就いた後は、分からないことがあるごとに一番詳しい人に聞いていました。職場内では失敗しても怒鳴られたり、詰め寄られて責任を問われることはなく、その点は伸び伸びとできます。
食べ物、言葉、習慣が違う中で働き方も変わり、就職して最初の半年は大変かと思います。しかし、「銀行口座が解決できた」「バスの乗り方が分かった」など、簡単なことでも異国の地での達成は得も言われぬ喜びになります。
生活の中で大半のことは日本より時間がかかります。場所が変われば常識が変わるように、マレーシア人のペースに合わせることがストレスを少なくできるポイントです。
どこにいてもやることは同じ
仕事面に関してさまざまな違いを紹介してきましたが、仕事の中でやることは同じです。決まった時間の中で効率よく与えられた業務をこなし売り上げをあげる、これだけです。淡々と自分のゴールに向かって仕事を進めるのみです。
仕事さえしていれば何も言われず、長期休暇が取れて、体調不良でもためらわずに休める環境が良かったです。日本の労働環境もそのように変わると、人生がより楽しく幸せになれると信じています。
まとめ〜転職はキャリアアップや待遇アップに必要なこと
3カ月から半年続けてみて合わないと思えば辞めて、マレーシアで他を探す、あるいは他国で転職先を探す、それに日本に帰るのもありです。
無理に続けてストレスから病気になったり仕事が嫌いになったりするぐらいだったら、さっさと辞めましょう。そして自分が一番心地よい会社を見つけましょう。
幸い、マレーシアは転職することでキャリアアップや給料や待遇アップを狙うのが一般的です。日本のように転職をマイナスにとらえる国ではないのです。